トマス・フランク 著『クールの征服――ビジネス文化、カウンターカルチャー、そしてヒップ消費主義の台頭』(1998年)

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    • 著者について
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タイトル

クールの征服――ビジネス文化、カウンターカルチャー、そしてヒップ消費主義の台頭*1

The Conquest of Cool: Business Culture, Counterculture, and the Rise of Hip Consumerism

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https://www.amazon.co.jp/dp/0226260127

簡単な紹介

 1960年代を中心に、広告の自意識が大きく変化したことを論じる。画一的な価値観へ訴えかける古い広告から、個性の解放と差異を求め、反抗的価値観へ訴えかける新しい広告へ。

 しばしば、この変化は対抗文化(カウンターカルチャー)からビジネス業界への一方的影響によるというものだとされる。商業主義が後からカウンターカルチャーを乗っ取ったとされる。フランクによるとそうではない。広告業界固有の論理に基づき生じたパラダイムシフトなのだという。

 このパラダイムは従来の官僚的価値観を否定し、「差異」や「不適合」「逸脱」を称揚する。そしてすぐさま主流派になってしまった。本書は広告業界の物語だが、消費者における自意識進化の物語でもある。消費者は懐疑的かつ個人主義的になったので、古い広告は廃れ、新しい広告が台頭したという話。

*1:もしかすると、訳は「クールの獲得」が良かったかもしれない

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キャスリン・ペイジ・ハーデン 著『遺伝くじ なぜDNAが社会的平等にとって問題になるのか』(2021年)

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  • 著者について
  • 速評(評者・田楽心)
原題

The Genetic Lottery Why DNA Matters for Social Equality /出版社:Princeton Univ Pr 刊行年:2021年9月

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https://www.amazon.co.jp/dp/0691190801

著者について

キャスリン・ペイジ・ハーデン(Kathryn Paige Harden):テキサス大学の心理学教授で、心理学及び行動遺伝学を専門とする。本書が初の著作となる*1

Twitter:@kph3k

速評(評者・田楽心)

 現代のレイシスト(人種差別主義者)は、遺伝子に大きな関心を抱いている。例えば本書の著者ハーデンの「非認知スキル(自制心や協調性など)と遺伝との関係」に関する論文への、Twitterからのアクセスを分析した結果がある。これによると、アクセス上位6クラスタのうち5クラスタは研究者のアカウントからだったが、1クラスタは自己紹介文から白人至上主義との関連が示唆されるユーザーたちだった。

 レイシストが遺伝子と社会的格差との関係に大きな関心を寄せるせいで、このテーマを研究すると、しばしば「差別主義者だ」と非難されたりタブー視される。ハーデンは同僚から、人間の遺伝子と教育的達成度との関係を研究することは「ホロコースト否定論者と変わらない」とメールで警告された。レイシストはなぜ遺伝に関心を寄せるのだろう。

*1:本人の公式サイト内“about”より :https://www.kpharden.com/about

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